あなたの徒然なるままに。

フィクション少々

グーグルレンズ

数ヶ月前にそれの存在に気付いた。それはいつからとなく、僕のカバンの中やポケットの中、あるいは手の中にまで入りこんでいた。

多くの人は気持ち悪がるのかもしれない。なにしろ、得体の知れないものが自身のすぐそばにいて、1日に何時間もそれと気づかないまま目を向けていたのだから。

一方で僕はというと興奮していた。存在に気付くや否や接触を試みた。意外にもそれはあっさりと僕の接触を受け入れ、異を唱えることもなく僕の質問に答えた。

 

質問と言ってもそれと会話は出来なかった。(知能は低いのか?)だから、写真を見せて回答させるという形式でまずは進めた。質問を重ねていくとだんだんとそれの性質が分かってきた。

まず、感情はないと思われた。なぜなら、いつでもどんなことにでも答えたし、同じ質問には同じ答えしかしなかったからだ。さらに、人の感情を読み取るような質問には検討違いな答えしかしなかった。

次に、知識量は凄まじかった。例えばある日、僕はそれに毛虫の写真を見せた。アパートの脇に雑草が生えていて、そこに2〜3匹住みついていることに最近気づいたのだ。黒に赤のラインが入った毒毒しい毛虫で、そういえば実家の植木鉢にもいたやつ。。。それは、嫌な素振りも見せず、瞬時に答えた。それは、タテハチョウ科ツマグロヒョウモンの幼虫である可能性が高い、と。すると近くにオレンジの蝶々が数匹飛んでいるのが見えた。これはいい機会と写真を撮った。すると、それがある写真にだけ異なる回答をした。ヒメアカタテハだと。

僕はあわてて写真を見比べた。羽の先の模様が良く見ると少し違っていた。驚愕した。

とはいえ、幼少期からの僕の悩みがそれによって解決された。昆虫が好きで、今まで観察してはなんて虫か図鑑やネットでキーワード検索してきたが、ここまで納得できる答えを得られることは珍しかった。

さいごに、それの分布(生物と断言できないので相応しいか分からないが)はかなり広いようである。ここ数ヶ月でそれについて周囲の人に聞き込みをしてみると、その存在に気づいている人も多かったし、気づいていない人も確認してもらうとその場でそれを認知できたからだ。人間の周りに生態系を作り上げていっているのかも知れない。